Q1 「kinetic」としての初ライブはいつごろだったでしょうか? その時に試みていたこと、その成果などを教えてください。

A1 Kineticとしての最初のライヴは確か2010年に代官山の「晴れたら空に豆まいて」だったと思います。ドラムの服部さんに始めてあったのが2008年くらいで、お互いにジャズをやりながらそれぞれ音響的なソロライヴパフォーマンスをやっていて。それまでジャズ界の若手の中でもそういう音響とかエレクトロニカ的なセンスを持った人がなかなかいなかったのですぐに意気投合しました。当時はとにかくマーティンブランドルマイヤーの「Radian」のサウンドからどれだけ離れられるか、或いは音響+RadianよりももっとJAZZ的アップローチが出来ないかと試行錯誤していました。あとは色んなフロントマンをいつでも迎え入れられるようなスタイルにしたかったのでベースとドラムという編成にこだわりました。程なくして江古田のフライングティーポットで二人で「Sound Shape」というイベントを始めました。僕らそれぞれのソロに、毎回違うゲストを呼んで最後に全員でセッションみたいな。ゲストの中には、キャル・ライアル、市野元彦、大島輝之、aenなどに出演して頂きました。それと同時期に僕ら二人とaenで「sssuuunnn」というターンテーブル、ベース、ドラムというユニットをやってまして、一枚自主制作でアルバムを作ってます。これはライヴ音源をある種のHiphopマナー的なノリのサウンドに再構築して僕が一晩で作りました。(いつか再リリースしたいです、、)それ以降、ベルリンのBoris Hegenbart、キャル・ライアル、小林うてな、千住宗臣+大谷さん等とコラボレーションをしています。



Q2  1stアルバムから現在に至るまでの、二人の使用機材&楽器の変遷を教えてください。もっとも変わった部分があったとすればどんなところでしょうか?

A2 最初の頃は生ドラム+ウッドベース+シーケンスの電子音だけで演奏していました。
しばらくこのスタイルでやっていく中で表面的なエレクトリックなサウンドをただ垂れ流すのではなくもう少し肉体的なアップローチというか、ストレートアヘッドなジャズをやっている僕らの強みでもあるアンサンブルのフィジカル面をもっと重視しようと思いました。それと同時に、少し矛盾して入るのですがJAZZ的な概念から出来るだけ離れたかったんです。JAZZのしがらみと言うか。それでシーケンスもウッドベースも生ドラムも排除して、僕がエレキベース、シンセベース、ラップトップ、ミックス、服部さんがハイハット、スネアドラム、バスドラムのシンセ、ROLANDのSPD、Ableton Liveなどを使うようになりました。そうしようとしたコンセプトの一つが生演奏をすべてMIDIトリガーして電子音に変換したら面白いんじゃないかなと。








Q3 リズム隊だけのユニットとしては、先達者にはsly&robbyや、Dry&Heavyなどがあり、どちらも極めてジャンル・オリエンテッドな音楽を演奏していますが、kineticとしては、そのような「ジャンル」を支えるリズム隊になる、というような発想はありますか?

A3 とくにジャンルというこだわりはないですね。JAZZのメソッドとかスキルを使っている意味ではJAZZなのかもしれないけど演奏している僕らの意識としてはダンスミュージックの一つとしてしか考えてないです。JAZZ的に考えると、例えば今の若手ミュージシャンはNYもLAも東京もジャズを経たミュージシャンがジャズから離れるというか、ジャズが一つの手段に過ぎない感覚っていうのが一つ共感できるポイントですね。だけどジャズ演奏すればすげー上手だしリスペクトもある。逆にいかにリズムセクションだけでどれだけ音楽的に構築できるががポイントなんです。だから最初のコンセプトとは少しズレてしまうけど二人という最小限でどれだけの事が出来るか、或いは出来ないことが一つのメリットだと思ってます。明らかに手が足りないですからね。それでビートをコンポジションする上で一番最初に考えたのは打ち込みみたいなビート、なんだけど打ち込みでは絶対に出来ない揺らぎというか、ある意味YMO的なコンセプトと同じなのですが、それを更にジャズのイディオムを生かしたハイレベルなビートが作れるのではないかと思いました。それを思いついたのは1stアルバムの5曲目「Knoq Da $#!+ Out Of Uuuuuuuuuu!!!!!!!!!!」という曲で、4拍子なんだけどズレたビートに聴こえるシーケンスを元にドラムを叩いてもらったのですが、クリック無しでは絶対に合わせられないんですよ。ただそういうちょっとしたズレが非常に心地よいビートを生み出すことを実感しましたね。アフリカ音楽にも精通しているドラマーの外山明さんが、5連符も6連符も大体同じと言ってまして、要するに細かいパルスも大事だけど、それ以上に大枠で捉えたときのリズムの集合性が重要なのかなと。それ以降作ったトラックでも複雑な拍子に聴こえるんだけど実は4拍子ってのが結構あります。



Q4 今回のアルバムに関して。がっちりとしたループと抜き差し、というよりは、モジュレーター類による漸次的変化によるサウンド・デザインが多いように感じます。このあたりの、音楽構造に関する好みや意見などありましたらお願いします。

A4 とにかく「db」では制作にあたり幾つかの制約を決めて
・レコーディングトラックス数最大15ch以内
・シーケンスは最小限に抑える
・リズム&ベースは人力(No Edit)
という制限された環境で制作を始めました。そうなってくると上モノのシンセ等も極力入れたくなくなくて。なのでライヴでもそうなんですが人力のベース&ドラムのパラをそれぞれ様々な複数のVSTプラグインやエフェクトを通してある種の自動的にエフェクトがかかるシステムにしています。もちろんプラグインもデタラメではなくちゃんと一つ一つ細かく設定して、各音色やセクションによって切り替わるようになっていたり。あとはあらかじめ僕のラップトップ内でPANやミックスバランスを細かく設定してあります。




Q5 同じく、ディレイに関する処理もそれほど多くないと思いますが、DUBという音楽に関しての興味や意見などありましたらお聞きしたいです。Kineticではやらない?

A5 ディレイはむしろ大好きなのですが、もちろんDUBも大好きです。ただKineticとしてはDUBという意識はほとんど無いですね。グラニュラー系のエフェクトは使っていますがもはやディレイの欠片も無い状態ですね。個人的にはBasic Channel、Andy Weatherall等が大好きなのでその辺りのDUBの影響は多少あるとは思います。ただ音響的な事よりも音質とかのほうが影響うけてます。



Q6 kineticのなかで、即興演奏的な要素が一番強い部分はどこでしょう? トラック・メイキングとライブ、それぞれで特徴的な点があれば。

A6 基本的にはトラック制作とライヴのシステムはほぼ一緒です。演奏のパラデータを僕のラップトップに流し込んでリアルタイムで加工しています。ただレコーディング時にはモジュラーシンセを使ったりアナログのエフェクトやシンセを通したりもしてますね。トラック制作時はある程度のデモを僕が作ってそれを服部さんの生演奏に差し替えて、さらにそれを再構築したりしてます。
ライヴ時はそれぞれ80%は曲を演奏しているのですが残り20%で各々遊んだり、ある程度の即興の余白を持たせて演奏しています。ドラムに関しては例えば二拍三連の間合いで遊んでみたり、ベースは一つのモードスケールからコードチェンジを編み出していくような、一見よくわからないけど、それぞれがそういった演奏力でトラックのポテンシャルを最大限に掘り下げて演奏してますね。



Q7 アナログ機材とデジタル機材の配分について、なにか気を付けている点があるとすれば教えてください。ライブにおいては、バックトラックとして固まったファイルを流して(デジタル)+多少の生演奏(アナログ)というかたちが、一般的によく見られるビート・ミュージックのかたちですが、kineticはずいぶん違うように感じます。

A7 デジタルの固定されたトラック、つまりオケに生演奏というカタチだと、どうしても構成や尺の縛りから逃れられないし一度ロストしてしまうとなかなかリカバーするのに大変ですよね。Kineticはドラムの服部さんがトラックによりますがクリックを聞いて、あとはそれぞれのパターンを演奏する、そのうえでJAZZ的なアンサンブルとかコンビネーションの力量が試されると言うか。そういったある種のデジタルの呪縛を出来るだけ回避して、それぞれの生演奏に専念できるシステムにしてます。曲の長さも流動的に伸び縮みしますし。アナログとデジタルの差異は特に気にしていないですね。常に流動的に考えてます。



Q8 エレクトロニクスを使うと、ベーシスト/ドラマーとしてのリズム担当の役割が入れ替わることが可能というか、二人ともさまざまな音色を使えますが、そのあたりの可能性についてkineticで何か探求していることがあれば教えてください。

A8 そのあたりはなるべく分けるようにしてますね。それぞれが本職だからですかね。あまりやりすぎてしまうとダサくなりかねないスタイルなので。ただトラックによっては例えばバスドラムが僕のラップトップでベース音に変換されていたり、OMSBの「Ascend the throne」なんかはエレキベースをラップトップで変換してメロディも兼ねていたり。ただそれぞれベースとドラム演奏してるんだけど出音はまったく見た目とは違う出音みたいなのが一つの理想ではありますね。







Q9 参加しているラッパーとその楽曲についてコメントをお願いします。

A9 最初に幾つかのトラックをそれぞれのラッパーに投げて選んでもらいました。OMSBの「Ascend the throne」は見事に綺麗にハマったと言うかこの曲をチョイスしたOMSBも流石ですがw。個人的にOMSBは大好きなラッパーで、明らかに日本人離れしたラップスキルというか、声が好きですね。K-BOMBさんも「Think Tank」時代から大好きで、独特のラップの間合いというか言葉もそうですが空気感が好きです。「gR mEtHoD」はもともとDJの大塚広子さんのコンピレーションアルバムに提供したトラックなのですが、元々がデモトラックだったのでそれを元にレコーディングし直してみたのですがうまくいかず、結果的に若干ビートに手を加えました。ラップを録音した後もトラックをかなり変更したのでかなりの難産でした。志人はドラムの服部さんがサポートを昔よくやっていた繋がりでお誘いしました。もちろん僕は降神のファンでしたし。「Mantle Mantra」は服部さんが作ったReactorのネタを基に作ったのですが、最初から志人のポエトリックなラップを想定して作りましたがやはりコレもハマりましたねw






Q10 これから目指す方向や音楽的に取り入れたいことがあれば教えてください。

A10 次の作品はゲストなしでインストアルバムを作りたいです。Ceroの荒内君がDJをするときにいつも「bd」とアフリカの民族音楽をミックスしてかけてくれてるみたいで、やはりリズムを突き詰めていくとそこは通過せざるをえないというか。もっと人力で成し得るリズムの可能性を掘り下げつつ、もっと踊れるアルバムを作りたいです。あとは映像作家とコラボレーションしたいですね。照明のアーティストとも絡めたら面白いかなと。去年O-eastでやったmouse on the kyes、toeとのスリーマンの時に来てくれたお客さんから映像的なインスピレーションを受けたと言って頂き、それまでは映像と一緒にやるのはさほど興味は無かったのですが、その辺りは今後やっていきたいです。その後は、色んなミュージシャンとのコラボレーションアルバムを作りたいです。既に何人かには声をかけています。トラック上でコラボレーションするカタチで作りたいですね。






BLACK SMOKER RECORDS 20th anniversary
『JAZZNINO』- 大谷能生”Jazz Alternative”Release Party -
3/26(日) 中野heavy sick zero

LIVE:
鈴木勲×近藤等則×KILLER-BONG
大谷能生×JUBE×BABA
Kinetic (千葉広樹×服部正嗣) ×OMSB
DJ:
YAZI
conomark
VIZZA
VJ:ROKAPENIS
OPEN&START:19:00
DOOR:3000YEN(1D別)
ADV:2200YEN(1D別)

◆前売りチケット◆
【e+(イープラス)】
http://sort.eplus.jp/sys/T1U14P0010843P006001P002219291P0030001
【DISK UNION(ディスクユニオン)】渋谷、新宿、下北沢クラブミュージック、ショップ
http://blog-shinjuku-club.diskunion.net/Entry/9453/
【LOS APSON?】
http://www.losapson.net/






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